F1公式 TECH TUESDAY:ギアボックスの設計がポーパシング問題につながっている?
高速化したオーストラリアGPでは、ポーパシングの挙動が顕著だった。フェラーリもメルセデスも、マシンは激しく揺さぶられていた。
しかし、フェラーリはシャルル・ルクレールがグランドスラム達成の完全勝利。一方でメルセデスは辛うじての表彰台という、明暗分かれる結果となった。
今週のF1公式「TECH TUESDAY」は、その原因がギアボックスの設計にあるのではないかと推測している。
TECH TUESDAY: Why the gearbox could be key to solving the porpoising puzzle | Formula 1®
(※わかりやすくするために、一部文章に手が加えてある。原文ママ翻訳ではないので注意)
これまでの覇者メルセデスがポーパシングに苦しんでいるうちに、フェラーリとレッドブルはどんどん離れている。しかし謎が残るのが、フェラーリもメルセデスと同様ポーパシングに苦しんでいるが、両者のタイム差が1秒もあることだ。
メルセデスは影響を受けているが、フェラーリは気になっていない謎
オーストラリアGPのターン9の進入では、フェラーリもメルセデスも同じようにポーパシングに見舞われていた。しかしフェラーリは、それがありながらも、シャルル・ルクレールがポールポジションと勝利の両方を獲得した。
そもそもダウンフォースは速さへのカギだが、同時にポーパシングの原因でもある。マクラーレンのランド・ノリスは、比較的ポーパシングに見舞われていないが、一方でダウンフォース不足に嘆いている。「僕らにポーパシングはたいして起きていない。だけどポーパシングは必ずしも悪いことじゃない。何チームかはポーパシングの原因からパフォーマンスを得ているからね。」
ノリスはラップタイムのためには、スムーズな乗り心地はニの次に考えていそうだ
フェラーリとメルセデスの違いは、それが発生する速度にあった
フェラーリとメルセデスが抱えるポーパシングの確かな違いは、メルセデスの方が低速から発生することだ。もしこの発生する速度がどこかのコーナリングスピードと一致する場合、チームは車高を上げてその場しのぎをする必要がある。
これによってポーパシングが発生する速度は上がり、邪魔はされなくなる。しかし、ダウンフォースが減っていることにもなる。今シーズンのマシンはグラウンドエフェクトカーだからだ。
フェラーリは、高速コーナーより速い速度域でポーパシングが発生する。コーナリング中は発生しないため、あれだけ跳ねていても問題ないわけだ。 ルクレールは「僕らも改善する必要があるかもしれない。しかし、もし跳ねなくなっても速くなるわけではないんだ。 この跳ねが唯一影響するのは、リスタートの時だ。リスタートの時だけは、思い切ってブレーキングをする自信がない、跳ねちゃうからね。しかし、他はOKだ。」
結局、メルセデスの問題は跳ねることそれ自体ではない。跳ねに対処するために車高を上げ、それによってダウンフォースが不足することに問題がある。
メルセデス製PU-ギアボックスの形状が問題?
なぜメルセデスが特に深刻なのか?その理由を調べると、ある推測に行き着く。
まず、メルセデスPUの4台がペースに苦しんでいることに気づく。メルセデスは最速のフェラーリからだいたい1秒遅れだ。マクラーレンはそこからさらに0.5秒遅く、ウィリアムズやアストンマーティンはさらに遅い。
しかし、GPSを分析すると、メルセデスPU自体ははフェラーリPUからは少ししか遅れていない。PUが原因のロスは0.15秒程度だ。メルセデスが1秒遅れているとすると、PUが遅れている主な要因とは言い難い。
そこで、PU形状に影響されるギアボックスに目を向けてみる。
なぜギアボックスがこうした問題を引き起こすと考えるのか?
まず、ギアボックスの設計には、周辺のパーツが影響してくる。長さでいえば、サイドポッドの位置だ。
メルセデス製のギアボックスを使うメルセデス、ウィリアムズ、アストンマーティンは、サイドポッドやフロア下のベンチュリトンネルの入り口を比較的後ろにしている。これは、それぞれの入り口をフロントタイヤから離すことで、乱流の影響を受けづらくするためだ。 結果的に、サイドポッド内の冷却機器が後ろよりになる。
すると、ギアボックスの前端も後ろよりになるが、最大ホイールベースはレギュレーションで決まっているため、メルセデス製ギアボックスの全長は必然的に短くなる。
一方で、フェラーリやハースのフェラーリ製PU-ギアボックスを採用するチームは、サイドポッドが比較して前で、ギアボックスは長く、細くなっているはずだ。
これがポーパシングとどう関わってくるのか?
1.重心の影響
ギアボックスが後ろよりになっているメルセデスは、他と比べてマシン重心が後ろ気味になっていると思われる。一方、ダウンフォースの大部分を発生するフロア下のベンチュリトンネルにおいて、ダウンフォースの中心は、マシンの中心にあるはずだ。
この位置関係のずれが、ポーパシングによる跳ねを大きくしているのではないかと考える。重心を支点、ダウンフォース中心を力点として、てこの原理に近いものが発生しているのだ。
2.フロア上の気流制御
ギアボックスが比較して細いフェラーリ、ハースは、その分リア周りを細くでき、フロア上、ディフューザーの上部を流れる気流に手を加えやすくなる。
その結果、ベンチュリトンネル内の気流速度を落としたとしても、フロア上に手を加えることで、同じレベルのダウンフォースを発生させられることが可能になるかもしれない。
記事の最後には「これは推測であり、実際には異なるかもしれないことを強調しておく」とあり、あくまで憶測の内容にすぎないようだ。
しかし、昨年と比べてもメルセデスPU勢が遅れたことは、偶然とは思えない。もし、シーズン中1度だけ許可されているギアボックスのアップデート後に彼らがパフォーマンスを上げてきたとしたら、この推測が正しかったことを裏付けるかもしれない。