フェラーリF1-75とレッドブルRB18のギア比を推定する
2022年のF1は第2戦までが終わり、フェラーリとレッドブルの2強状態がはっきりしてきた。
フェラーリにとっては2018年以来のトップ争いであり、伝統のチームが復活したと言っても過言ではないだろう。車体やPUをうまく開発し、ドライバーも素晴らしい2人が揃っている。
フェラーリの強みは、特にコーナーの立ち上がりにある。それを助けているのは、PUの強さもあるが、選択したギア比にもあるのだ。ここでは、ギア比について、レッドブルとどのような差があるのかを見ていきたい。
フェラーリは”ローギアード”
コーナーで差をつけるには、コーナリングスピードを上げる方法や、エンジンのトルクを上げる方法、そしてギア比を下げる方法がある。
ローギアード化すれば、アクセルを踏み始めた時のエンジンの回転数が高くなり、よりパワーが引き出せる。フェラーリはこの方法を試みたのだ。
下は開幕戦バーレーンGP予選、フェラーリのシャルル・ルクレールとレッドブルのマックス・フェルスタッペンの、テレメトリーデータ(速度、エンジン回転数、ギアポジション)の比較だ。
「Gear」のグラフを見ると、ルクレールの方が低速コーナーではギアが1段高い。また、ギアを上げるタイミングも少し早い。これはフェラーリがギア比を低くしている明確な証拠だ。
これによる加速の鋭さが、フェラーリの速さを後押ししている。ちなみにこれは、F1公式記事「TECH TUESDAY」でも触れられている。
実際のギア比は?
さて、実際のところ、フェラーリとレッドブルのギア比(減速比)はどのようになっているのか。グラフを作成し、算出してみた。
エンジンとドライブシャフトの回転数の差「総合減速比」をグラフから読み取った数値で算出した。その方法は下の通りだ。
- サウジアラビアGPの予選のデータを利用
- DRSの影響を省くため、ターン3~4の間とターン10~13の間の直線から算出
- グラフから任意の点のエンジン回転数と速度を読み取り、計算した
- 計算式は、総合減速比=エンジン回転数×(タイヤ外径÷速度)
- 18インチタイヤの直径は720mmとした
- 3速以下はデータが怪しかったためなし
結果は下の通り。
ギアポジション | フェラーリ減速比 | レッドブル減速比 | 差 |
4 | 9.040 | 8.429 | -0.611 |
5 | 7.276 | 7.153 | -0.123 |
6 | 6.347 | 6.347 | 0 |
7 | 5.524 | 5,.524 | 0 |
8 | 4.892 | 4.941 | +0.049 |
4,5速では、フェラーリの方がローギアード(減速比が高い)。6,7速は同じギア比で、8速はレッドブルの方がローギアードという結果が出た。
F1でいえば、4、5速ギアというのは150~240km/hの速度域であり、このような場所ではフェラーリの方が加速が良いということになる。
150~240km/hで通過するコーナーはかなり多い。極端な低速ターンでない限り、この速度域から外れるコーナーはほぼないと言っていい。
今後も武器になるか
フェラーリはレッドブルに対し、コーナーでは明らかな優位を持っている。サウジアラビアGPではレッドブルがポール&勝利を挙げたが、高速トラックにストレートスピードを伸ばしたセッティングがハマっただけとも考えられる。
空力特性も相まって、他マシンとは一線を画したコーナリングパフォーマンスを誇っている。追いつけるチームは皆無だ。
今年は跳ね馬の年になるかもしれない。