TECH TUESDAY:高地のメキシコGP、タイトル争いで有利なのはどっち?
メキシコGPが開催されるエルマノ・ロドリゲス・サーキットの標高、2,200mという高さはF1マシンのパフォーマンスに大きな影響を与える。
2,200mという標高は、とにかく空気が薄い。特に酸素濃度は、海面の75%ほどになってしまう。
当然ながら、タイトル争いの2台にももちろん影響がある。特性が異なるレッドブルとメルセデスは、それぞれどのような影響を受けるのか?
パワーユニットの面
2014年からハイブリッドPU時代を迎えてから、メルセデスがパワー競争を席巻してきた。しかし、メキシコGPではいつもそのパフォーマンスには陰りがさしていた。これはどうしてなのか?
空気が薄くなる高地では、PUにはマイナスだ。前述の通り酸素濃度が減り、空気は燃焼しにくくなる。
しかしそれはターボの回転数を上げることで埋め合わせをできる。空気が薄いことは、同時に空気抵抗を減らす。タービンの回転数は上昇し、さらに圧縮できる。その結果として酸素量がいつもと同じくらいになる。
と、なればいいが、実際はそうはいかない。F1ではターボの回転数がレギュレーションで125,000rpmと制限されている。いつもの標高ではそれほど速くは回さないが、この標高ではPUパフォーマンスの妨げになる。つまり、メルセデスPUのアドバンテージは小さくなる。
さらに、熱の問題もある。F1のターボはかなり大きい。その分、稼働するうえで熱を多く発生する。
2,200mの薄い空気は、いつものサーキットの空気よりも冷却効率が落ちる。したがって、ターボはいつも以上に回転数を上げてさらに熱が発生するが、それを冷やすことは難しいのだ。ターボの性能は落ちる。
このように、メルセデスPUのアドバンテージは小さくなる。ホンダPUとの差が縮まるのだ。
ダウンフォースとドラッグ
空気が薄いと、ウイングやフロア下にダウンフォースを作り出す圧力差が作りにくくなる。どのマシンもダウンフォースが減る。この減少量がかなり大きく、モナコGPほどの大きなウイングをつけていても、高速のモンツァで使うウイングよりもダウンフォースが小さくなるほどだ。
ハイレーキのレッドブルマシンは、ローレーキのメルセデスマシンよりもダウンフォースの最大量が多い。つまり、ダウンフォースが減る環境で、レッドブルの方が減少量が多くなる。つまりエアロパッケージの差が小さくなるのだ。
しかしダウンフォースに相関するドラッグ(空気抵抗)も考える必要がある。空気が薄いとドラッグも減る。だからダウンフォースレベルとドラッグのバランスがいつもとは異なってくる。
同じダウンフォースレベルでも、メキシコGPではドラッグがいつもより小さくなる。
これの恩恵を受けやすいのはレッドブルの方だ。ドラッグの大きいいハイレーキマシンにはこの影響は小さくない。ダウンフォースを削ってストレートスピードを伸ばしてきたが、ここではそれが緩和される。
タイヤとブレーキ
前述の通り、薄い空気では冷えにくいことから、必然的にタイヤ、特にブレーキには厳しい環境になる。
メルセデスは、他のチームよりブレーキダクト周りの気流には凝っている。すなわちブレーキダクトはコンパクトで、ブレーキの冷却はかなりギリギリの設計をしている。
一方でレッドブルはシンプルなブレーキダクトだ。開口部は大きく、ブレーキ温度を保つために、時には一部分をふさいで走るほど。
したがって、ブレーキ冷却の面ではレッドブルに余裕がありそうだ。
今年もレッドブル有利か?
こうして、レッドブルはいつもアドバンテージを有すことができている。
しかし、前回のアメリカGPではメルセデス有利の下馬評が覆された。今年のチャンピオンシップには、過去の評価は当てはまらないことが多い。
どちらが勝つのか。2週間後が楽しみだ。
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