TECH TUESDAY:ハミルトンを守った「ハロ」その全貌

TECH TUESDAY::ハミルトンを守った「ハロ」その全貌

参考:F1公式(TECH TUESDAY: A close look at the halo – and how it ‘saved Hamilton’s neck’ in Monza crash | Formula 1®

ドライバーを保護するパーツ「ハロ」は、またも称賛を受けることとなった。

「正直言って、今日はとても幸運だった。」とハミルトンはモンツァでのクラッシュ後に語っている。

「ハロに大感謝だ。完全に僕を、首を守ってくれた。」

2018年から広く導入され始めたハロだが、その当時は多くの反対があった。ハロによってF1マシンの美しさ、そしてフォーミュラカーの哲学が失われるという意見で溢れかえっていた。

しかし、それらの批判は、2018年ベルギーGPでシャルル・ルクレールの、2020年バーレーンGPでロマン・グロージャンの、そして今シーズンのロマーニャGPでバルテリ・ボッタスの命を救った可能性があることから、徐々に聞こえなくなってきた。

当事者であるグロージャンも、ハロの機能は認めている。

「何年か前はハロの導入には賛成していなかった。しかしこれ素晴らしいものだ。もしこハロがなかったら、今このように話すことはできていなかっただろう。」

ハロの導入経緯

コクピット内のドライバーを守るための研究は、およそ7年前から始まった。F1のみならずF2やインディカーなどで多くの事故が起こっていた。そしてドライバーたちは、コックピットに飛び込んでくる物体に対して、より良い防護策の必要性に言及し始めた。

その開発過程で、レッドブルはジェット戦闘機のようなシールド(のちのインディカーに導入)を研究していた。しかし結局採用されたのは、メルセデスが研究をしていた現在の「ハロ」だった。

FIAは、実際にタイヤなどを衝突させる試験を行い、2018年へのハロ導入へと向かっていった。

ドライバーを守る厳しいレギュレーション

イタリアGPでのアクシデントでハミルトンを守ったのは、主に2つのロールフープ「プライマリロールストラクチャ(頭の後ろの高い部分)」と「ハロ」だった。

これらロールフープは非常に厳しい試験を通過しなければならない。その試験の条項を見てみよう。

まずはプライマリロールストラクチャだ。

(レギュレーションの抜粋簡易訳)

50kNの荷重を左右から、60kNをマシン前方方向から後、そして90kNを垂直に、部品の上部に固定した平らなパッド(直径200mm)を通して、各方向に垂直にかかる。

荷重をかけた時、部品の変形は25mm以内である必要がある。これは荷重方向にそって測定される。そしてどの破損(歪み)は100mm以内でないといけない。

ハロの条項も同じように厳しい。

(レギュレーションの抜粋簡易訳)

116kNの荷重を垂直に下に向けて、46kNをマシン前方から後方に向けて、C-C面から785mm前方の位置から、また同面から810mm上方の位置からかけられる。また93kNの荷重を左右から、83kNをマシン前方方向から、C-C面から590mm前方の位置から、また同面から790mm上方の位置からハロの表面に向かってかけられる。

このテストは全行程が3分以内で実行され、それぞれの荷重は少なくとも5秒以上維持され、どのパーツにも規定以上の破損は認められない。

メルセデスのテクニカルディレクター、ジェームス・アリソンは以前、「だいたい2階建てロンドンバスがハロの上に載ってもいいように、シャシーを強化するデザインを考える必要があった。」と語っている。

つまりは、簡単に言うと、11トンもの物体を5秒載せる、その試験を何度も繰り返すということだ。

そのような厳しい試験を通り抜けて、ハロはレースに導入されているのだ。

実際のところ、フェルスタッペンのマシンのタイヤはハロを通過してハミルトンに接触したが、マシンの重さはハロが支えていたため、それは重大な影響を与えず、ハミルトンは首の痛みを訴えるだけで済んだ。

安全への追及は常に研究されている。ハミルトンの痛みも、安全への改善の糧になるに違いない。


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